●ルポ西成
國友公司・著。
西成で約2ヵ月半に渡り飯場作業、ドヤのスタッフなどをしながら生活した著者の体験ルポ。
中古価格 |
先日閉鎖となった「あいりんセンター」(以下関連ニュース)での仕事探しに始まり、作業員として入った建築現場(ビル解体)での危険な作業、その後に働いたドヤ(南海ホテル)での仕事内容や住人の様子、さらに深夜の西成を散策した風景や闇市、売人など危険な部分にも突っ込んだ話が多い。
西成あいりんセンター閉鎖騒動、行政vs日雇い労働者 - エキサイトニュース
様々な経歴を持つ作業員やホテルスタッフとの交流、オカマが集まる噂のある某映画館への突入など、多様な住人の様子を通じて西成の本性がよくわかるのが興味深い。
(自分は基本的に宿泊地(そのついでの散策地)として利用するのがほとんどで、住人と関わる勇気も余裕もなかったので新鮮)
※新世界国際劇場。
外には「トリプル不倫」「離婚妻狂乱」などR18っぽい映画タイトルや映画をイメージした画(半裸の女性だったため一部トリミング)が描かれていた。
西成地区の中でいままで自分が歩いたことのある場所のすぐ近くに結構危ない場所もあったのだと思うと、少しぞっとするものがある。
(萩ノ茶屋商店街の南側、1本、2本裏道に入った場所が有名な三角公園や組事務所の集まるエリアだったとか、以前泊まったホテル和香の裏手が昼飲みの溜まり場「三先通り」だったとか。そういえば和香で泊まった日は朝も夜も外が酔っ払いで騒がしかったなあと思い出したり)
大阪西成探訪・萩之茶屋本通商店街で見かけた貼紙など(2018/12)
安宿旅行記・大阪・西成「ビジネスホテル 和香」(1泊1600円~)
そんな西成・ドヤでの生活の中で綴られた著者の思いにも所々共感する部分があったのだが、以下、印象に残った一節。
●「『なんのために生きるのか?』と私たちはよく考えるが、別に何かのために生きなきゃいけないなんて一体誰が決めた?」
>今はネットやSNSのせいで情報過多で「よりよく生きるには」と考えて他人を見てるといくら考えても答えが出ないという罠。
考えるのに疲れたら自分の中での原始的な楽しみにかえって、「うまい」「気持ちいい」「楽しい」だけで生きるのもたまにはいいじゃないかと。
それが許されるのが西成で、自分が年に数回、別荘のように泊まりに行くのもそういう気分でリフレッシュするためなんだと改めて思った。
●「(西成の他に)私にはまだ行かなくてはならない場所、やらなければいけないことが山ほどある」
>人生の目的を見失った時、全てを捨ててここに飛び込めばゼロから新たな目的を見出せるのかもしれない。
(絶望の奥底に希望があった(?)パンドラの箱のようなものとでもいうか)
(絶望の奥底に希望があった(?)パンドラの箱のようなものとでもいうか)
周りの西成住人がどうこうという以前に、まず自分の中にやる気が残ってるかどうかで飛び込んでから引き返せるか、否かが決まるのだろう。
***************************************
「よりよく生きるには」と考えて他人を見てるといくら考えても答えが出ないという罠。
***************************************
30年余り一緒に歩いた相手を看取った時「生きる意味」を求めて辿り着いたのが西成でした。
それは高度成長期を支えた労働者の方々が高齢化し、老いて行く彼らの生きざまと自分を重ねてみたい気持ちがあったから。けどそれは自己満足な感傷だと一蹴してくれたのも西成でした。
生きる事に意味を見出せなくとも、生きている限りは生きざるを得ないと言う本能、現実。頭では分かっていても心底教えてくれる西成の街はやはり好きです。
段々弱って行く相手の最後を看取り、火葬場で焼かれた遺骨を見た時、人生観、死生観が変わった気がします。
どんな理由をつけて偽ろうが、生きて行くどんな理由にもならないって事を。
****************************************
(絶望の奥底に希望があった(?)パンドラの箱のようなものとでもいうか)
****************************************
「生きて行こう」と言うやる気の前では、絶望の深淵も明るく照らすものだと信じます。
コメントさせて頂いてから4年余、私も60歳を過ぎました。今は大阪に住み、時折私も西成や新世界を散策しています。
今はコロナ禍でインバウンドもいなくなり寂れた街並みですが、気取らない(飾らない)街並みや人は、やはり私には合います。何も考えず街の風に吹かれて歩くのも心地いい。
どうぞこれからもマイペースで更新されるよう…楽しみに拝見しております。